結核の予防接種
結核の予防接種――BCGについて知りたい!
日本では1歳未満の乳幼児全員を対象に、結核の予防接種であるBCG接種が行われています。BCGが一体どんなもので、どのような効果があるのでしょうか。副作用(副反応)についても解説していきます。
BCGとはどんなもの? どんな効果があるの?
BCGとは毒性をきわめて弱くした結核菌の一種です。
人間には体内に病原菌が入り込んだ際、それに対抗して免疫を作り出す力があります。結核については、弱毒性の菌であるBCGをわざと体内に入れることで免疫を得られるため、世界中でワクチン接種が行われてきました。
BCGはそれを開発したフランス・パスツール研究所のカルメット(C)とゲラン(G)の頭文字と、「細菌」を表すBから名づけられたもので、強い毒性をもつウシ型結核菌をもとに開発されました。この弱毒性のBCGが初めてヒトに接種されたのは1921年で、長い歴史をもつワクチンと言えるでしょう。
厚生労働省によれば、生後1歳までのBCGワクチン接種により、小児の結核の発症を約50%から70%程度減らすことができるとのことです(感染そのものを防ぐ効果はありません)。さらに、命の危険にかかわる結核性髄膜炎や粟粒結核にかかってしまうリスクを約60%から80%程度減らせると報告されています。
ただしBCG接種の効果は一生続くわけではありません。10年から15年間は有効であるものの、それ以降の効果は徐々に下がっていくとされています。
日本でのBCG接種と、副作用について知りたい!
日本では、赤ちゃんが生まれてから生後1歳に至るまでの間に、このBCG接種を受けることが努力義務とされています。自治体によって違いますが、一般的には生後5か月から8か月になるまでの間が標準的な接種期間です。
多くの自治体では、生後の定期健診に合わせ保健所などで集団接種が行われています。接種は菌が塗布された針が並んでいるスタンプ型の注射器によって行われます。肩の部分に接種するとケロイドになりやすいこともあり、上腕の外側、中央部分に打つことが薬事法上決められています。
気になる副作用(副反応)ですが、全く健康被害が起きていないわけではありません。
厚生労働省の発表では接種した者のうち、1%以下の割合で、接種したあとの潰瘍やリンパ節が腫れる現象がみられます。また、発生頻度は不明ですが、接種後に激しいアレルギー反応(アナフィラキシー)や骨炎・骨髄炎等が発生した報告があります。
一般的に広くみられる現象として、接種から1-2週間で針のあとが赤くなったり、固く腫れたりしたのち、化膿してかさぶたになることがあるようです。この現象は接種後5-6週ごろに最も強くなると考えられていますが、多くはその部位を清潔に保つことで症状は消えていきます。ただし、潰瘍につながることもあるので、観察をしていて気になることがあれば、遠慮せず医療機関に相談するとよいでしょう。
また、結核に感染している人がBCGの接種を受けた際、平均的に3日間程度と比較的短い期間で上記と同様の症状がみられることがあります。これを「コッホ現象」といいます。「コッホ現象は結核菌に似た菌に感染している人にも見られるもので、この現象が確認されたらすぐに専門機関にかかるよう推奨されています。
BCG接種は多くの赤ちゃんにとって初めての注射となるうえ、副反応も気がかりではありますが、結核に感染・発病した場合のリスクもしっかりと考えあわせて接種の判断をするのが望ましいでしょう。
参考サイト
結核(BCGワクチン) |厚生労働省
結核とBCGワクチンに関するQ&A|厚生労働省
第7回厚生科学審議会結核部会資料【資料1-2】BCG接種(小児結核対策)について(PDF:219KB)
予防接種ってな~んだ? _ よ~くわかる予防接種 _ ワクチンについて _ 一般社団法人日本ワクチン産業協会.html
結核とは:国立感染症研究所