結核は昔の病気と思いがちですが、現代の日本にも存在しています。では、結核とはどんな症状なのでしょうか。

結核の感染経路

結核はどのようにして広まるのか? 結核菌の特徴と感染経路

結核はヒトからヒトへうつる感染症です。結核を発病した人がする咳やくしゃみに含まれる結核菌が、空気を介して別な人の体内に入ることが結核のはじまりと言えます。結核菌がどのような特徴を持ち、感染を広げていくのかについて知っておきましょう。

人体に入り込み増殖する結核菌

結核のもととなる結核菌は細菌で、長さが1-4ミクロン、幅0.3 -0.6ミクロンの細長い円筒状形をしています。鎧のような膜でおおわれているため、乾燥に強く、生きる力や繁殖力が強いです。

人間の体内の環境――特に肺の環境は、酸素を好む結核菌にとっては絶好の繁殖地です。抵抗力が落ちた人体は結核菌を追い出すことができず、その間に結核菌は肺に定着して増殖を始めます。

結核にはどうやってかかるのか? 「感染」「発病」の違い

飛沫感染インフルエンザの感染と同じように、結核を発病した人が咳やくしゃみをすることで、結核菌を含む痰などが空中に飛び出して、その結核菌を吸い込むこと(飛沫感染)が結核のはじまりです。しかし、吸い込んだ人全員が結核に感染するわけではありません。吸いこんだ人の体内に入った結核菌は、その人が持つ抵抗力で外に押し出される場合があり、この場合は感染しないのです。この「感染しても多くの人が発病しない」というのが結核の特徴的な点です。
一方、体外へ押し出す力が弱く、結核菌に負けてしまった場合、菌の多くは肺の中にある肺胞という組織に取り込まれます。これを「感染」と呼びます。
注意が必要なのは、この「感染」と「発病」とは区別されている状態であるということです。感染後、体内にいる結核菌が増殖を重ね、臓器が菌に侵された状態が「発病」とされます。

発病の可能性は感染からほどない頃(おおむね一年以内)が一番高く、抵抗力の弱い乳幼児と思春期にも高くなります。また、HIV感染者、糖尿病患者など特定の病気を持っている場合なども高くなります。

一方で、5年-20年間もの長い間発病しないタイプがあるのも結核の特徴です。

近年、日本で毎年新規登録されている結核患者はその半分以上が70歳以上の高齢者ですが、この中には過去感染した人が、高齢になって発症した例が含まれるとされています。







人にうつす可能性があるのは菌を排出している期間

隔離先ほどの説明のように、「感染」しているだけでは菌が空中にまきちらされることはありませんが、「発病」して体外に結核菌を放出している期間に関しては厳重な注意が必要です。

結核にかかっていることが明らかで、なおかつ菌を排出していることが確認された場合は、入院治療が行われます。結核は法定感染症のため、法律によって入院等の措置が決められています。

一般的には大体2-3か月の入院治療の後、菌の排出がなくなったことを確認し、通院治療に移行するようです。そのように適切な治療を受けて退院した患者さんは他の人を感染させることはありませんので、周囲の人も、誤解したり、過敏な反応をしたりすることなく、安心して通常の社会生活を送っていきましょう。

参考資料・参考サイト

感染症法に基づく医師の届出のお願い |厚生労働省.

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

『結核を防ぐ、治す』森亨,講談社,2009